2023年9月10日

【読了】反逆(下)


(以下講談社HPより)
なんたる上さまの冷酷――命乞いをする幼な子の首を刎ねた信長、秀吉と光秀、2人の心理的競い合いを楽しむ信長。信長を討つことは天の道!光秀は長い間心に沈澱していた反逆の囁きから解き放たれた……。戦いの果てにみた人間の弱さ、悲哀、寂しさを、そして生き残った村重、右近らの落魄の人生を描く。


ちょっと仕事が立て込んでいてあまり時間がなかったのでざっと読みました。

上巻は主に戦国武将の荒木村重が織田信長の家臣になるまで~謀反を起こし毛利軍に救援を頼むべく尼崎へ向かう経緯が描かれていました。


下巻は村重の妻、だし以下女房衆が信長によって見せしめ的に処刑され、戦意喪失して茶人になったエピソードのほか、半ばからは明智光秀の話になり、明智家滅亡後に秀吉が台頭してようやく戦国の世が終息した場面で終わりました。


書き下ろしではなく新聞に掲載された小説だったようでストーリーがやや冗長的で、特に下巻からは信長の残虐な処刑行為の話が多くなったり、登場人物も多くなったりで、読むのが大変でした。


物語自体は長かったですが、戦国武将としてはあまりに優柔不断だった荒木村重、戦国の世のキリスト教徒として信仰と矛盾した生き方しかできなかった高山右近、虎視眈々と天下統一を狙う羽柴秀吉、嫉妬に苦しむ明智光秀、そして神仏を信じず自らが神になろうとした信長などなど、それぞれの戦国武将の性格や行動の違いがうまく描かれていました。


荒木村重のことはこの小説を読むまで知りませんでしたが、妻だしとの間にできたものの家臣の親戚筋のものに逃がされた赤ん坊が、江戸時代初期に絵師として活躍し浮世絵の祖と言われる岩佐又兵衛ではないかという話はちょっと驚きました。いつぞや、どこかの美術館に行った時に岩佐又兵衛の名前を見かけた記憶があるので。


最後の、遠藤周作の「取材の滴」もこの小説を書くために取材で訪れた場所や調べた文献などのことが説明されていて興味深かったです。

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