明治期の文学者、夏目漱石の初期の中編小説。初出は「新小説」[1906(明治39)年]。「智(ち)に働けば角(かど)が立つ。情に棹(さお)させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」との書き出しは有名。三十歳の画家の主人公が文明を嫌って東京から山中の温泉宿(熊本小天温泉)を訪れ、その宿の美しい娘、那美と出会う。那美の画を描くことをめぐって展開するストーリーに沿って、俗塵を離れた心持ちになれる詩こそ真の芸術だという文学観と「非人情」の美学が展開される。低徊趣味や俳句趣味の色濃い作品。(アマゾンHPより)
「吾輩は猫である」「坊っちゃん」に続く、夏目漱石の初期の作品。
物語性のあるお話というよりは、漱石の芸術観、人生観みたいなものを画工(えかき)である主人公に語らせた小説とも随筆とも言い難い、でもただひたすらに文章が美しい、不思議な作品でした。
正岡子規も認めるほどに俳句や漢詩の才能にも溢れていた夏目漱石の文章は、どこかリズム感が感じられ、息継ぎも自然にできるような呼吸感のある、旋律性をもった文章だなといつも読みながら感じます。
以下、解説に掲載されていた漱石の言葉。
「『草枕』は、この世間普通にいう小説とはまったく反対の意味で書いたのである。ただ一種の感じ――美しい感じが読者の頭に残りさえすればよい。……さればこそ、プロットもなければ、事件の発展もない」
漱石の狙いどおり、美しさがとても頭に残る、絵画のようでもあり音楽のようでもある素敵な作品でした。
私が読んだのは祖父の文学全集の本でしたが、注釈や解説がとても詳しくいろいろ勉強になりました。昔の本なので字など読みにくいですがだんだん慣れてきました。昔っぽいフォントを読み続けていたり紙をめくったりしていると昭和にトリップした感じになれます(笑)。
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