2024年7月19日

【読了】漱石の思い出

 NHKのドラマ「夏目漱石の妻」で存在を知ったこの本をようやく読み終えました。



名作「坊ちゃん」に描かれる松山でのいろいろな出来事、夏目家の親戚のこと、熊本での婚礼の様子から微に入り細を穿って語られる文豪・夏目漱石の日常生活。お見合いで出会ってから死別するまでを共に過した鏡子夫人なければ、垣間見ることのできなかった人間・漱石の赤裸々な姿を浮き彫りにする。鏡子が漱石と生活を共にした二十年間、一日も欠かさず漱石が狂気の沙汰を演じたわけではない。周期的に訪れた狂気の時のほうが遥かに短いのである。しかも自分は小説家だから、常軌を逸しても許されるのだとか、ものを書けないイライラを家族にぶつけてもよいのだという傲慢さや身勝手さを、漱石という人は微塵も有していない。(解説・半藤未利子より)(アマゾンHPより)

460ページもあるなかなか分厚い本でしたが、思った以上におもしろくて結構あっという間に読み終えることができました。


上の半藤未利子さん(夏目漱石のお孫さんでジャーナリストで作家の半藤一利さんの奥様)の解説のとおり、夏目漱石は神経衰弱の病からくる妄想癖や癇癪、暴力がなければおおらかであまり小さなことを気にしたりしない、それどころかユーモアがあって心あたたかい楽しい人だったのだなぁというのが読んでいてよく分かりました。とにかく漱石のもとに集まってくる人の数が半端ないのも印象的でした。


それでも怖かったときは想像を絶する怖さだったらしく、とくに上の2人のお子さんは漱石の神経衰弱がとても酷かったころにまだ小さかったため、優しい漱石のほうが圧倒的に多かったのにそのころの怖い漱石像が骨身にまでしみていて最後まで慣れ親しむことができなかったそうです。


「いろんな男の人をみてきたけど、あたしゃお父様が一番いいねぇ」


結局のところ、奥様である夏目鏡子さんがこの本(実際はインタビュー形式だったものを娘婿である松岡譲さんがまとめたもの)で一番伝えたかったことは、このひと言だったんだろうなと思いました。


ちなみにこの本を出そうと思ったきっかけは、ラフカディオ・ハーンの奥様である小泉セツさん(NHKの朝ドラ化が決まったそう!)がハーンの思い出を記されたこと(おそらく先日読んだ「日本の面影II」に収録されている「思い出の記」)だったそう。


漱石はハーンの後に教鞭を執ってほしいと頼まれたのを「自分には無理だ」と一度は断っています。


同年代に生きた2人の全く別々の人物やその家族の様子も窺えたり比較できたりして、なかなか興味深いつながりを感じました。


結構前から夏目漱石の「草枕」をちょこちょこと読んでいて、こちらも明日中には読み終えそうです。

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