2023年7月19日

【読了】とりかへばや物語

(以下角川HPより)
内気な息子と活発な娘。いっそ二人の性を取り替えたらうまく行く?
女性的な息子と男性的な娘をもつ父親が、二人の性を取り替え、娘を女性と結婚させ、息子を女官として女性の東宮に仕えさせた。二人は周到に生活していたが、やがて破綻していく。平安最末期の奇想天外な物語。

昔、河合隼雄さんの↓の本を読んで面白かったので原作を読みたいと思って購入したまま積ん読となっていた本です。古典ものなのでちょっと腰が重かったのですが、ようやく読み終えました。

(以下新潮社HPより)
性が入れ替わった男女を描いた異色の王朝文学『とりかへばや物語』。かつて「淫猥」と評された物語には、「性の境界」をめぐる深いテーマが隠されていた。男らしさと女らしさ、自我とエロス、性変換と両性具有――深層心理学の立場からジェンダーと性愛の謎を解き明かすスリリングな評論。河合隼雄が遺した名著、選書版で登場。


「とりかへばや」というのは「とりかえたい」という意味です。

おとなしい男の子と活発な女の子のきょうだいの父親が男の子と女の子を行く末を憂い、いっそ「とりかえられればな」という思いから始まった物語。

各章が「あらすじ→現代訳→原文→解説(+コラム)」という構成になっており、やや説明が多い感も否めませんが、まぁ読み進めるにつれてこれはこれで分かりやすくていいのかもと思いました。「ビギナーズ・クラシックス」だし。編者の方の個人的感想もちょっと多いかなと思いましたが…。

結局男性が成人する年頃(12歳)になったきょうだいは、男君は女性として、女君は男性として生きることになるのですが、10代も半ばをさしかかった思春期あたりからの性の目覚めをきっかけに物事が思わぬ方向へと展開していきます。

主に女君(男に扮している)の様々な憂い・苦しみがメインに語られていて、男君(女に扮している)の悩みはあまり語られていません。それどころか、時代的背景もあるのかもしれませんが、後半になると男君は人生を楽しんでいるように思われますが、女君の憂いは最後まで尽きることはありませんでした。

父親の周りの目を気にする姿、性への目覚めと恋愛感情、男性の往来に一喜一憂する女性の姿、女好きで1人に決められない男性の姿、きょうだい・家族間の問題、夫婦間の問題などなど、平安時代も現代も悩みや人生のテーマは変わらないなぁと率直に思いました。

最後は別に何か大きく物事が解決してめでたしめでたしではなく、あっさりした終わり方。

物語としては短めで淡々としている感じでしたが、古典ものだけどまた読みたいと思いました。結構好きでした。

それにしても平安貴族は狭い空間内での人間関係の中で生き、特に女性は自由もほとんどなくて大変だなぁ…。生まれ変わっても平安貴族にはなりたくない(笑)。





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