2023年7月24日

【読了】朗読者

15歳のぼくは、母親といってもおかしくないほど年上の女性と恋に落ちた。「なにか朗読してよ、坊や!」──ハンナは、なぜかいつも本を朗読して聞かせて欲しいと求める。人知れず逢瀬を重ねる二人。だが、ハンナは突然失踪してしまう。彼女の隠していた秘密とは何か。二人の愛に、終わったはずの戦争が影を落していた。現代ドイツ文学の旗手による、世界中を感動させた大ベストセラー。

外国の文学はあまり好きではないのでほとんど読まないのですが、この本は参考にしている読書ブログで紹介されて気になったので購入した本です。


ここしばらく電車に乗る機会が多かったので数日で読み終えることができました。ドイツ語から翻訳された小説ですが翻訳が読みやすかったのですんなり読めました。


主人公のミヒャエルがある日の出来事をきっかけに21歳年上の女性ハンナと深い仲になったことから始まる物語です。


前半は2人が濃密な関係を築いていく様子からハンナが突然姿を消すまで、中盤は数年後に2人が再会を果たした場所である法廷での様子とハンナが姿を消した理由がミヒャエルの語りで語られます。


ハンナ自身はその理由を決して語らない点は実はこの物語の大きなポイントでした。それを自らの口で語っていればハンナの人生もミヒャエルの人生も変わっていただろうに、どうしてもそれができなかったハンナ。そしてそれをハンナの代わりにどうしても証言できなかったミヒャエル。


そして後半では刑務所に収容されたハンナに朗読カセットを送り続けるミヒャエルの思いが語られます。


ハンナから手紙が来ても(これもまたこの物語の大きなポイントです)決して返事を書かずただひたすら朗読カセットを送り続けたミヒャエル。朗読カセットのおかげでハンナは少しずつ自尊心を得ていったと同時に、手紙の返事がなかったことはそのやっと手に入れた自尊心に深く傷をつけていくことになったのではないかなと感じました。


だからこその結末のような気がします。そして、もしかすると最後の最後までミヒャエルはそのことに気づいていないのかもしれない…。


私の勝手な感想ですが、ミヒャエルのハンナに対する思いは愛ではなくエゴなのではないかなと思いました。実は出会ったころから最後の最後まで…。そのことにハンナは気づいていて、最後それは絶望に変わったのかもしれません。。。


ハンナのミヒャエルに対する気持ちはどういうものだったのか…こちらも愛ではなく何か別なものだったように感じます。


訳者後書きで、著者は2回この本を読んでほしいと言っていると書かれていました。ハンナの胸中はまったく語られず、ひたすらミヒャエルの回想という形で物語が進んでいくためか、確かに1回では物語の本質が捉えづらいかもしれません。


あまり期待せずに読んだのですが、不思議と心に深く残る小説でした。またしばらくしたら読み返してみたいです。


次はこの間の「とりかへばや」に続き、古典ものの「更級日記」を読もうかと思っています。


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