2023年7月31日

【読了】更級日記

原文・現代語訳・解説の3部構成になっていて読みやすい本でした。原文は後回しにし、現代語訳と解説を読み終えました。


菅原孝標女の13歳~53歳ごろまでの記録です。夫に先立たれ孤独の日々を送る中で50を過ぎて書き始めたので回想録に近いですが、特に若いころに抱いていた『源氏物語』への憧れはすごく瑞々しかったです。それほど『源氏物語』への憧れが強かったのだなというのがひしひしと伝わってきました。

「浮舟」に憧れて浮舟のようにイケメンエリートたちとの恋や刺激的な日々を思い描いていた少女時代の夢は現実のものとはならず、当時ではかなり晩婚の33歳で平凡な男性とやや仕方ない感じで結婚。「思っていたことは何一つ叶いませんでした」という歌は切ない…

その後は『源氏物語』への憧憬も忘れ、子供の将来を心配する日々や昔の友人は自分のことを忘れたのではないかという、やや後ろ向きな気持ちが綴られています。

少女のころから仏への信仰心があったようですが、思い描いた人生にならなかったのは信心が足りないからだと、物詣でに熱心になります。物詣での旅で見た情景や感じた思いを綴った文は、少女時代の回想録と似たようなときめきやきらめきを少し感じました。

その後突然夫が亡くなり、子供たちも独立し、1人で暮らす寂しさに耐えられず孤独に苛まれる日々の途中で日記は終わります。


こう書くだけでも、どちらかというと明るく前向きな日記というよりはネガティブな印象が強いですが、それでも表現や感性が瑞々しくてどこか生き生きとしていて、不思議と重い気持ちにはなりませんでした。

訳者の方の解説でも「不思議な魅力」と書かれていましたが、本当にそのとおりだと思います。


『とりかへばや』でも書いたように、平安時代も現代も基本的な悩みは全く変わらないので共感できる部分が多いなぁというのが特に印象的な点でした。

平安時代の人が抱えていた悩みが千年以上経った今でも根本的には解決されていない。それを考えると、今自分が抱えている悩みが100年に満たない人生の間に、一時的に悩みが晴れることはあっても解決されることはないだろうと諦めがつきます(笑)。


とにもかくにも、1回読んだだけではこの本の良さは味わい尽くせないなという印象です。実際、読書メーターの感想でも再読や再々読、なんなら再々々々々…なんて人もいました。


ちなみにこちらのまとめ記事が分かりやすかったので、どんな内容か知りたい方にはおすすめです。

https://manareki.com/sarasinanikki

私が読んだ『とりかへばや』と同シリーズのこちらのサイトでも紹介されていた、↓の本も読んでみたいです。


そんなに期待していなかったので実家で読んで置いて帰ろうと思ったのですが、また読み返したいなと思ったので東京に持ち帰ってから原文を読もうと思います。

Youtubeで朗読もあったのでこれもぼちぼち聞こうかな。




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