2024年8月3日

【読了】手の倫理

7月中に読み終わった1冊です。

手の倫理

人が人にさわる/ふれるとき、そこにはどんな交流が生まれるのか。
介助、子育て、教育、性愛、看取りなど、さまざまな関わりの場面で、
コミュニケーションは単なる情報伝達の領域を超えて相互的に豊かに深まる。
ときに侵襲的、一方向的な「さわる」から、意志や衝動の確認、共鳴・信頼を生み出す沃野の通路となる「ふれる」へ。
相手を知るために伸ばされる手は、表面から内部へと浸透しつつ、相手との境界、自分の体の輪郭を曖昧にし、新たな関係を呼び覚ます。
目ではなく触覚が生み出す、人間同士の関係の創造的可能性を探る。(Amazonより) 


楽天ブックスで別の本を買おうと思ったときに「おすすめ」に上がってきたので買ってみた本です。あとで知りましたが、NHKの番組で取り上げられていたそうで、レビューも結構たくさんありました。


障害をもつ人と関わるようになって人のからだにさわる/ふれる経験が増えた著者が、その経験のなかでも特に視覚障害者向けのランニングの伴走での体験から「さわる/ふれる」という行為とは一体どういうことなのかに疑問を持ち、それについて深く掘り下げていく内容です。


視覚障害者向けのランニングの伴走では、小さなロープをわっかにしてその両端を2人が持って、腕の振りをシンクロ(同調)させながら横に並んで走るのだとか。


著者は、自分がアイマスクを付けて目の見える人に伴走してもらう「ブラインドラン」体験で感じた「ロープを通じた間接的なふれ合い」に衝撃を受けたそうです。


そこから「さわる」と「ふれる」のそもそもの違い、そしてとくに「ふれること」からどのように「信頼」「コミュニケーション」「共鳴」などが生まれてくるのかについて考察されています。


「ふれる」ことによる内面的な関わり合い、相手との一体感などが詳しく書かれていますが、最後に、さわる/ふれることの「不埒さ」についても語られています。そこで紹介された事例を読んで、「さわる/ふれる」というのはとてもプライベートでデリケートな行為でもあるということを改めて認識させられました。


第1章は「倫理」のお話で、かなり抽象的で難しくて挫折しそうになりましたが、2章からは具体的な話に進んでいき、とても興味深く読めました。


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