2024年8月31日

【読了】奔馬

 今日は仕事しようと思ったけれどなんだかやる気が・・・納期に余裕があるから明日でもいいかと思ってしまっています。。。



親友・松枝清顕を看取った本多繁邦の前に、清顕と同じく脇腹に三つの黒子をもつ青年・飯沼勲が現れる。腐敗した政財界と疲弊した社会を変えんと志す勲は、右翼塾を主宰する父や塾生、恋人や財界重鎮らに翻弄され孤独を深めていく。本多の見守るなか、純粋さを求める青年は、たった一人の叛乱へひた走るのだった――。愛と裏切りが渦巻く『豊饒の海』第二巻。(出典:新潮社HP)

三島由紀夫の『豊饒の海』シリーズ二話目、「奔馬」を読み終えました。


すごかった、のひと言です。この「奔馬」の主人公の一人、飯沼勲は三島由紀夫自身のことなのかなと思ったくらい、劇的なラストでした。


大人たちの様々な思惑に翻弄される、勲の純粋透明な志。


「まだ若いからだ」「大人になれば清濁併せ呑むということが分かるだろう」「素晴らしい志だが同時に危険だ」などと大人たちに諭され、知り合う大人たち、父親の知人(と勲は思っているが過去世で親友だった)の本多、父親と母親、父の弟子の男、そして年上の愛する人に純粋だけではいられない世界を嫌というほど見せられなすりつけられる。


それを誰でもない自らの体験で思い知らされたこと、そしてそれを自分ではどうしても受け入れられないことに対する絶望・・・。そして目に輝きを失ってしまう勲・・・。


本多が清顕から託された夢日記の意味とそれが分かったとき。そして法廷で軍人下宿を営む年老いた男、北崎の証言場面。そう来るか!と痺れました。


長編小説(春の雪より長い505ページ)なのにだらける部分が少ないので(とは言え、勲が愛読する「神風連」の話は長かった)物語の世界へ没入させる力がすごい。そしてそれなのに随所に上記のような「はっ」とさせられるポイントがあり、第一話のあれか!と突然読者目線に戻させられる。臨場感と立体感のあるすごい小説だと思いました。


最後の「解説」も三島由紀夫を直接知る方のようで、この小説を書く上での様々なエピソードなどが味わい深くてすごく良かったです。


タイトル「奔馬」もいいですね。辞書には「勢いよく走る馬。また、勢いの激しいことのたとえ」とありますが、前回の「春の雪」という静かな感じのするタイトルとの対比もいいし、第一話「春の雪」の後半の清顕から第二話の勲に続く「激しさ」をよく表しています。


熱く書いてしまいましたが、私が言うまでもなく、三島由紀夫、天才ですね・・・。人気があるのがよく分かります。


ちなみに、この「【解説マップ】三島由紀夫はなぜ人気?何がすごい?代表作や思想まで考察します」の記事、おもしろかったです。偉人マップ(作家)もおもしろいです。


次は「暁の寺」。勲が最後に見た情景と次の物語がどのようにつながるのか、楽しみです。



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